お絵かきのモチベが保てない方へ。学者さんの方法を参考にしてみては?
「絵を描きたい!」というのはわりと普遍的な気持ちだと思います。とくに現代のようにアニメやマンガが社会に浸透すればなおさら、自分も描いてみたいと思いますよね。
ですが、じっさいに描きはじめると10分で飽きるとか、そもそも下手すぎて落ち込むとか、人間の体が複雑すぎてどう勉強すればいいのか分からねぇとか、いろいろとやる気を削ぐ現象が頻発します。
そういう障害にぶつかっても描き続けられるのが才能なんだ!と、思う向きもあるでしょう。でも、そんなアツい気持ちがなくても描き続けられる方法があったら、知りたくないですか?わたしが見つけてきたので聞いてください。
この本に書いてありましたよ!
できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)
- 作者: ポール.J・シルヴィア,高橋さきの
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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論文なんて書かねぇよ!というひとにも大変おすすめできる本です。わたしはこの本を読んで、冗談ではなく、ほんとうに人生が変わりました。
さて、今回はちょっと変わった書評として、この本の内容は「絵を描くのにどう応用できるか」を交えつつ書いてみたいと思います。5章と6章は7章はより研究者向けの内容となっていますので、この書評では扱わないこととします。ご了承ください。
※いちばん重要なのは2章冒頭です。無駄な箇所を読みたくないという方はその部分だけでもお読みいただけるとうれしいです。
第1章:はじめに
- 本書の目指すところを説明してくれます
- 「本書では、目に見える作業について扱おうと思う。ライティングの生産性に関わってくるのは、計画を立て、短期目標をはっきりさせ、進捗状況を把握し、書く習慣をつけ、自分へのご褒美も忘れないといった、やれば簡単にできるのにやっていないことがらの方だろう。生産性の高い書き手というのは、何か特別な才能や性質を持っているわけではない。より多くの時間を、より効率的に使っているというだけのことだ」(p.2)
- 研究者の方でも何かを書くというのは大変です。研究してるときやデータを集めているときは楽しくても、それを文章にまとめる段になると科学の手続きに四苦八苦してしまうとのこと。結果、頭の中には「いずれ書く」ということになっているアイディアがたくさんある人も多いのではないか、と。そしていざまとまった時間ができても、日常の些事に追われて書けなかったことをグチるのです。
- 書くというのは技術であり、身につけることができるものです。しかし学生は大学では「そのうち書けるようになるよ」としか教わらず、教員自体も満足に書けていません。仮に教わっても、それは正しい文体で書く方法だったりします。もっとも重要である"どのようにモチベーションを保つか"は教えてくれないのです。
- こう見ると「書く」ことは「描く」ことはやっぱり違うな、という感じがいきなりしますね。絵を描くことには文章を書くよりは楽しい要素が多い気がします。いや、そうでもないかな…仕事を受けるようになったりすると違ってくるのかもしれません。
- 「技術については教えてくれるけど、モチベの保ち方は教えてくれない」というのは絵と同じでしょう。人体のプロポーション、筋肉の部位の形状と名前、パースの取り方、色の塗り方…解説してくれる本もサイトも山のようにありますが、そもそも練習する気力が湧かない、というのが問題なのです。モチベについて言われることは「熱意を持て」のような曖昧なものになりがちではないでしょうか。本書では、どうやればモチベーションを保てるのか、これから教えてくれます。
第2章:言い訳は禁物 書かないことを正当化しない
- この章の目的は「言い訳を打破すること」です。もっともらしく説明される「書けない理由」は実は穴だらけだと著者は指摘します。
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言い訳その1「書く時間がとれない」「まとまった時間さえとれれば、書けるのに」
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これはあまりにも使われるので、使ったことのない研究者はいないでしょう。ですが、この言い訳は自分が逆境にいることにして感情を慰撫するものでしかないのです。
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では、どうすればこの言い訳を潰せるでしょうか?答えは「スケジュールを立てること」です。時間を「見つける」のではなく「割りふって」おけば見つける必要さえないでしょう。スケジュール立てるときに大切なのは日数や時間ではなく規則性です。最初は週に4時間でも。
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時たま突発的に書くことにしている人を、著者は「一気書き派」と呼んでいます。彼らはそれなりには仕事をこなしますが、「書かねば書かねば」と常に煩悶します。一方で「スケジュール派」は、作業が進行することを知っているので安穏とした気持ちでいられるのです。
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さて、せっかく立てたスケジュールは絶対に守らねばなりません。周囲の人に何を言われようが、破るのは「ダメ、ゼッタイ」*1を貫きましょう。スケジュールに文句を言う輩は1.そもそも書き手として不出来である、か、2.執筆が仕事であることを分かってない、のどちらかです。
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スケジュールを守るだけで執筆が進むとは最初は信じられないでしょうが、とにかくやってみろ、そうすれば効果が分かるからと、著者は言っています。
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言い訳その2「もう少し分析をしないと」「もう少し論文を読まないと」
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この言い訳は研究者からすると真っ当な言い訳に聞こえかねないそうです。実際、論文を仕上げるにはデータを正しく解釈し、先行研究を踏まえる必要があるからです。この言い訳を使う人は、はじめは完璧主義の立派な研究者だと思ってもらえますが、論文を完成させることはないので、時間が経つにつれて化けの皮がはがれる運命にあります。
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この言い訳も簡単に打ち破ることができます。執筆の準備として必要な作業–データの解析、図や表を作る–はすべて立てたスケジュールの時間にやってしまえばいいのです。書くという行為はその前段階の作業も含めたものなのです。
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言い訳その3「文章をたくさん書くなら、新しいコンピュータが必要だ」(「レーザープリンター」「よい椅子」「もう少しよい机)版もあり)
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文書を書くのにゲーミングPCはいらんだろ、というような感じで一蹴してます。webに繋がらないことを嘆く人には、むしろ注意を逸らされない環境にいることを褒めています。
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言い訳その4「気分がのってくるのを待っている」「インスピレーションが湧いたときが一番よいものが書ける」
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実験の結果、インスピレーションが湧くタイミングは書く前ではなく書く作業中だと証明されています。スケジュールに沿って書くことがいい論文をたくさん書くための最良の方法だとしています。
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- 言い訳その1「時間が取れない」はtwitterなんかでもよく見ますね。スケジュールを立てましょう!これを実践すると本当に描けるようになりますよ。違うのは、絵を仕事にしていない人もいることですね。ただ、趣味の時間も立派な時間の使い方です。趣味を楽しむ時間は他の介入を拒否する、というのは十分にあり得る選択ではないでしょうか。あるいはいっそのこと、少額でもいいので稼いでしまえば「仕事」だと強弁することもできます*2。
- その2「もう少し分析をしないと」に当たるのはなんでしょうね。同人誌を描くときは「原作を読み込まないとシナリオができない」みたいなことを言う人もいるのかもしれません。スケジュール中に読みましょう。でも読んだだけで「よし、今日も描いた」なんて言っちゃだめですよ。
- その3「新しいコンピュータが必要だ」絵の場合、ほんとうに良い道具が必要になります。アプリケーションがスムーズに動くスペックのPC、ペンタブ、デュアルスクリーンなどです。ただ、本当に描きたいのであれば最低限紙とペンがあればいつでも描けますよね。わたしのはクソザコオンボロPCくんですが何とか描けてます。ものすごいスペックの道具が揃わなければ描けないというわけでもないので、この言い訳を自覚したら「ほんとうに今の環境では描けないのか?」と自問してみましょう。
- その4は「気分が~」「インスピレーション」。これの言い換えとして聞くのが「モチベが~」というヤツでしょう。スケジュールを立てて描いてください。ほんとに描きたいものが無くなったら、美術解剖学なりパースなり、勉強することはたくさんあるので勉強しましょう。学び終えた後は新しい技術を使った絵を描きたくなっていることでしょう。
第3章:動機づけは大切 書こうという気持ちを持ち続ける
- スケジュールを立てたはいいけれど、初めはどこから手を付けていいのかよく分からない、という事態に陥ることもよくあります。最初にやるべきことは「目標を設定すること」です。目標を立てることは執筆の準備のひとつなので、スケジュールを割り振った時間に立ててしまいましょう。
- まずは目標事項を列挙します。長いリストになりますが、スケジュール派はそのリストが終わることを想像できるはずです。つぎに大きな目標を小さな目標に分割しましょう。この段階では具体的な目標が必要になります。「200ワード書く」「新しい原稿に目を向けてアウトラインを作る」など何をやればいいのか分からなくなることが無いようにしましょう。
- 次に目標に優先順位を付けましょう。研究者の方々は入稿用の原稿チェックを最優先、締め切りのあるものをその次…というふうにしているようです。大学院生向けの優先順位の付け方も書かれていますが、省略。
- モチベーションを維持するのに有効な手段は他にもあります「進行状況を監視する」ことです。これには目標を明確にする効果と、行動を監視して望んだ行動(この場合執筆)が導かれる効果があります。著者は日付とその日に書けたワード数をソフトで監視しているとのこと。
- スランプについては切り捨てています。スケジュールに従って書いていればスランプに陥ることはない。としています。
第4章:励ましあうのも大事 書くためのサポートグループを作ろう
- 研究者・大学院生・学部生たちの不平不満の言いあいはもはや芸術の域に達していますが、無意味なものです。本章はこうした言いあいをより生産的なものにするためのサポートグループを招集するための章です。
- 執筆サポートグループを運営するための重要事項は5つ。
- 1.集まるたびに短期目標を共有し、みんなで相互チェックする
- 2.愚痴りあいにならないよう、目標は執筆関係のものに絞る
- 3.大きな目標を達成したメンバーにはご褒美を、うまくいってないメンバーには現実的な目標を立てさせる
- 4.教員と院生を分ける
- 5.コーヒーを飲もう
- サポートグループは社会的圧力を生み、執筆を進ませる。学科の友人と組めば書くことはもっと楽しくなるはずだ。
- これは同人サークルですね!参加したことはないですが、やはりみなさん活力をもらったりしているのでしょうか。
上に書いた通り5~7章は飛ばします。ですが簡単に触れておくと、5章は文体(しかも英文!)、6章は学術論文を掲載させるまで(リジェクトされても諦めないで、リジェクトはされて当然なのだから)、7章は本を完成させるまで、です。
第8章 おわりに
- 本書の核心は「スケジュールに沿って書き進める」というものでした。
- スケジュールを立ててそれを進めると、執筆活動は日常生活の一部になっていきます。達成するたびに自分を褒め、ご褒美をあげましょう。日々の小さな達成がモチベーションになります。
- 文章をたくさん書くために必要なのは才能でも動機づけでもなく、書きたいと思うことでもありません。スケジュールを立て、従う。それだけです。いくら執筆が習慣になっても書くことはたいへんでつらいことですが、決めたことをただやるだけです。
- 文章をやたらたくさん書くのではなく、自分で書きたい量を書きましょう。少ないことをきっちり書きたいなら、執筆時間を考える時間に使うのです。論文を量産して業績ばかり追うようになったら、自分の目標を考え直してみるべきです。
- さいご。人生を楽しみましょう
いかがでしたでしょうか。絵を描く人も「スケジュールを立ててそれに沿って描く」ということをいちどやってみて下さい。ほんとうに作業が進むようになりますよ!では、お読みいただきありがとうございました。